Blog

ブログ

色彩検定を非デザイナーにもおすすめする理由

Yuko Hashimoto
Yuko Hashimoto デザイナー

弊社はシステム開発会社ですが、IT系の資格だけでなく色彩検定取得も資格手当の対象になります。デザインに興味を持つ人が取得しています。

しかしこの資格、色彩について網羅的に学べるので、デザインわかんないよーという方にこそおすすめです。

デザイナーじゃないプログラマとかもデザインしようぜ! という記事を最近よく見ますが、色彩関連については、あれこれネット記事や本を探してきたり、何もわからないままサンプルを真似して使うよりは、検定のテキストで勉強した方が早くて確実です。色彩検定ならカラーカードで実際の配色を試せます。

どんな資格で、学ぶとどんな良いことがあるのか、ちょっと書いてみようと思います。

色彩検定の概要

色彩検定協会/カラーコーディネーター

「色彩検定」は1990年の第1回開催より累計150万人以上の方が受検した、文部科学省後援の公的資格です。
色彩検定では色の基礎から、配色技法(色の組み合わせ方)、専門分野における利用などを幅広く学習します。「色彩検定」の学習によって感性や経験によらない、理論の土台を身に付けることができます。また、ご自身の現在の知識や目指すレベルに合わせて1、2、3級、UC級 のどの級からでもご受検いただけます。色についての知識が無く基礎からしっかり学びたい方や、現在色を扱った仕事をしているが知識を整理したい方、さらなるスキルアップを目指したい方など、様々な方に受検していただけます。

色彩検定とは|色彩検定協会/カラーコーディネーター

各級の目安と試験範囲も引用元の公式ページに載っています。

1級:プロフェッショナル。色彩を提案する力を身につける

2級:実務に応用したい人向け。仕事に応用できる各種技法まで学ぶ

3級:初めて色を学ぶ方向け。色彩の理論や法則を基礎から学ぶ

UC級:色のユニバーサルデザインに特化した内容

1級に合格すると講師養成講座の受講ができます。

基礎知識を得るなら2級で十分かなと思いますが、イメージから配色を行うとか現場に反映して考えてみる例が出てくるのは1級からです。

おすすめする理由

  1. 楽しい!
  2. 色の基本的な知識が身に付く
  3. 身の回りのデザインやマーケティングに興味が湧く
  4. ユニバーサルデザインや個人ごとの視覚の違いについて考えが深まる
  5. 理系の方が楽しめる
  6. 級ごとの設計が実務のレベル感に沿っている
  7. この世は主観と雰囲気で動く無常なものなのだと実感できる

1. 楽しい!

検定試験の勉強の何が楽しいねんと思われるかもしれませんが、カラフルなカードをはさみで切ってのりで貼るのが純粋に楽しいです。

カラーカードとはさみとのりが必要な検定ってこれくらいじゃないの!? 「はさみとのり」、図工の時間を思い出す素敵な響き!

2級・3級はカラーカードなしでも勉強はできますが、切り貼りした方が楽しいです。特に3級。

カラーカード
新配色カード199a

このカラーカードを使い、色の分類や配色を学んでいきます。

今もあるのかわかりませんが、私が受験した2005年のテキストではテキスト付録のPCCSトーンの表を自分で作るようになっていました。テキスト内の配色の説明も一部自分でカードを貼る形式になっていて、手を動かして身に付く上に非常に楽しかったです。

テキストの一部
3級テキストの付録ページ
テキストの一部
こちらも3級テキストの付録ページ

1級では2次試験の内容が「指定された条件を満たした配色を提案し、カラーカードを貼る」というものになります。

たのしい!

2. 色の基本的な知識が身に付く

これはよく言われる特長ですね。色の心理効果、錯覚などの視覚的効果、基本的な配色技法や慣用色の特徴や由来などが学べます。

かっこいいと思ったのにヘンテコな色の組み合わせになっちゃうのは何故なのだ〜? デザイン系の人はどうやって無難にまとめてるんだ〜? と悩みがちな方におすすめです。

配色はセンスや天性のものの問題ではなく、法則があるんです。

昔の人が違和感や疑問から頑張って研究した歴史も学べるので親近感が湧きます。

3. 身の回りのデザインやマーケティングに興味が湧く

ファッションやプロダクトデザインで良いものとされる=普遍的に良いもの、というわけではなく、その時代性や売りたい方向付けが重要になってきます。そんなトレンドをどのように調査したり提案したりしているのかも学びます。

「色」そのものだけでなく、ファッション、建築、景観、工業デザイン、照明などについても学びます。

店頭や街中で「なんか良さそう」に見えていたものが入念に計画・設計されていたというカラクリに気付けます。学んだからといって実際に自分でそんな計画ができるのかというと難しいんですが、物を見る目がちょっと変わって、「ああそういうことね完全に理解した」という気分になれます。

4. ユニバーサルデザインや個人ごとの視覚の違いについて考えが深まる

バリアフリーやユニバーサルデザインは超高齢社会の日本ではこれからますます重要になってきますが、色に関しても同じです。しかしカラーユニバーサルデザインについては、まだプロのデザイナーも意識していないことが多いなという印象です。

もし自分のプロダクトが、色のせいで使えない人がいたら?

年齢や病気、視覚の特性ごとに配慮することは何か?

安全のための色使いは、どうしてあの色でなければならないのか?

幼児向けや高齢者向けのプロダクトは、雰囲気だけでなく実用的な理由であの色になっている

公共性が高いプロダクトに取り組んでいた時に配色で注意されたのはこういうことか!

……などなど、気付けることが多いです。

人によって見えている色が違うとか、配慮を行わないことで危険が増すことが多くの方に共有されると良いなと思っています。非デザイナーにも是非触れてほしい……! 提案しても無視されがちなので味方が欲しい……!

色彩検定ではUC(色のユニバーサルデザイン)級という、ユニバーサルデザインに特化して学べる級も用意されています。配色とか難しいと思っている方も、このUC級からまずは取得してみてはどうでしょうか。

5. 理系の方が楽しめる

テキストを開くとファッションの歴史から話が始まるので、ウゲェ〜となるかもしれませんが、実は理系の人の方が検定の攻略は簡単だと思います。

視覚の生理的な仕組み、色(光・電磁波)の物理特性、表色系や色空間を用いた色表示と再現、心理統計などの比重が、級が上がるごとに増すからです。

あまり深いところには触れず、色の基礎と工業分野での測定などに絡めてサラッとやる感じですが、物理や生物(神経や脳)に興味がある人の方が飲み込みやすいと思います。行列や3次元空間にも抵抗がない方が概念が理解しやすいです。プラ・金属・繊維とかの材料に詳しいと暗記がかなり楽。

ちなみに計算式は出ても計算問題は出ません。数学得意な人は残念!

6. 級ごとの設計が実務のレベル感に沿っている

色彩検定1級とカラーコーディネーター検定1級(今は級が改定されてスタンダードとアドバンスになりました)を同時期に受験しました。

感想として、色彩検定の方がどの級も必要な知識を網羅していて、それが級が上がるごとに深まっていくよう設計されているのと、専門分野が深すぎないおかげで汎用性があるなと感じました。

色彩検定とカラーコーディネーター検定のどちらも2・3級(当時)は表色系が違うだけで似た内容に思えましたが、色彩検定の方は1級で2・3級の知識を使うことが多く、2・3級で細かすぎる内容に凹むことがありませんでした。

カラーコーディネーター検定の方は、2・3級でもいきなり専門分野が深くなったり、1級で超実務的な内容が増えて難易度が跳ね上がってきついなと思ったわけですが、改定されて今はどうなってるんでしょうね……。

7. この世は主観と雰囲気で動く無常なものなのだと実感できる

人によって視覚も違う、

環境や素材や組み合わせで見え方と印象が変わる、

表色系も色々ある、

文化や時代によって感じ方が違う、

トレンドやファッションはどんどん移り変わる、

「良さそう」に見えるものは、ヒトの基本的な心理評価や人間工学を省けば可能性は無限大、

何もかも常に変化し、

万物は流転しており、

絶対なんてものはなく……

という悟りの境地にだんだん入ってきます。

自分が「良い」と思ったものが違う属性の人が見て「ダサい」のは当たり前で、それでも見えてくる「良さ」とは何なのか? 何故それぞれがそう「感じる」のか? 「感じる」ことをどう測定したり、再現するか? ということを人間は研究してきて、いろんな分野にまたがることなのだなあ……ということが見えてきます。

そうした研究をフルに活用して行うことが「流行を作って売上を上げるマーケティング」というのも、なかなか切ないですよね。人というものは悲しい生き物だな。エコノミックアニマル……。

「見えるもの」から人間と社会を理解する

色彩検定は「色」という切り口からいろんな分野を学ぶことができる検定試験です。

「見える」とはどういうことか? どんな効果を狙ってそう「見える」ように設計されているのか?

自分や他人の「感じ方」や文化や歴史について学び、どうやって測定したり表現するかを考える、楽しい検定です。おすすめです!

もちろんここまで思いつめずに「かっこいい配色が知りたい!」だけでも良いですよ!

(どうせ似たようなもんやろと色彩検定とカラーコーディネーター検定の上位級を一気に受験するのはおすすめしません。表色系だけでなく細かい部分とアプローチが異なる全く別の資格という印象です。)

2・3級の勉強用と1級受験時に買ったものと試験で配られたもの、3つ出てきた